統合領域・計算問題 4 / 5

第4問 電子線の相互校正

円筒形電離箱から平行平板形電離箱へ校正定数を与え、2回の線形内挿と係数の比によって別の線質の線量を求めます。

問題

コバルト60で校正された円筒形電離箱Aを基準として、高エネルギー電子線の線質 QcrossQ_{\mathrm{cross}} で、平行平板形電離箱Bを相互校正した。

その後、電離箱Bを用いて、別の電子線の線質 QQ における水吸収線量を測定した。

上付きの AA、BB は、それぞれの電離箱を表す。Q0Q_0 はコバルト60の線質を表す。

共通の測定条件

  • 水ファントムを使用し、SSDは100 cm、表面の照射野は10 cm × 10 cmとする。
  • 各電離箱の位置決めは適切に行い、それぞれの線質の校正深における線量を評価する。
  • 相互校正時はAとBを交互に配置し、同じMUで測定する。装置出力の変動は無視できる。
  • 読み値はすべて、温度気圧・極性効果・イオン再結合・電位計の補正を済ませた電荷の絶対値である。
  • 漏れ電流の影響は無視できる。

相互校正時のデータ

項目記号値
相互校正用電子線の線質指標R50,crossR_{50,\mathrm{cross}}8.00 g/cm²
Aのコバルト60での水吸収線量校正定数ND,w,Q0AN^A_{D,w,Q_0}0.05300 Gy/nC
Aの線質変換係数kQcross,Q0Ak^A_{Q_{\mathrm{cross}},Q_0}0.9000
Aの補正済み読み値MQcrossAM^A_{Q_{\mathrm{cross}}}20.00 nC
Bの補正済み読み値MQcrossBM^B_{Q_{\mathrm{cross}}}2.000 nC

相互校正後の測定データ

項目記号値
測定対象の電子線の線質指標R50,QR_{50,Q}2.50 g/cm²
Bの補正済み読み値MQBM^B_Q4.000 nC

電離箱Bの線質変換に用いる係数表

以下の係数は、いずれも共通の中間線質 QintQ_{\mathrm{int}} を基準としている。

中間線質 QintQ_{\mathrm{int}} の R50R_{50} は7.50 g/cm²とする。

線質指標 R50R_{50}[g/cm²]電離箱Bの係数:QintQ_{\mathrm{int}} 基準
2.001.0600
3.001.0400
7.501.0000
9.000.9850

表にない値は、その値を挟む2点から線形内挿して求める。

設問

  1. 線質 QcrossQ_{\mathrm{cross}} と QQ の校正深を求めなさい。
  2. 相互校正時の校正深における水吸収線量を、電離箱Aのデータから求めなさい。
  3. 電離箱Bの、線質 QcrossQ_{\mathrm{cross}} における水吸収線量校正定数を求めなさい。
  4. 次の3つの線質変換係数を求めなさい。
    • kQcross,QintBk^B_{Q_{\mathrm{cross}},Q_{\mathrm{int}}}:表から線形内挿する。
    • kQ,QintBk^B_{Q,Q_{\mathrm{int}}}:表から線形内挿する。
    • kQ,QcrossBk^B_{Q,Q_{\mathrm{cross}}}:上の2つの係数の比から求める。
  5. 電離箱Bで測定した、線質 QQ の校正深における水吸収線量を求めなさい。

校正深と線量は小数第3位、校正定数と線質変換係数は小数第4位まで示す。途中計算では丸めない。

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解答・解説

1.それぞれの校正深を求める

公式

dref=0.6R50−0.1d_{\mathrm{ref}}=0.6R_{50}-0.1

この式では、drefd_{\mathrm{ref}} と R50R_{50} の単位を、どちらも g/cm2\mathrm{g/cm^2} とします。

数値の代入

相互校正する線質では、

dref,cross=0.6×8.00−0.1=4.700 g/cm2d_{\mathrm{ref,cross}} = 0.6\times8.00-0.1 = 4.700\ \mathrm{g/cm^2}

測定対象の線質では、

dref,Q=0.6×2.50−0.1=1.400 g/cm2d_{\mathrm{ref},Q} = 0.6\times2.50-0.1 = 1.400\ \mathrm{g/cm^2}

結果

dref,cross=4.700 g/cm2\boxed{d_{\mathrm{ref,cross}}=4.700\ \mathrm{g/cm^2}}
dref,Q=1.400 g/cm2\boxed{d_{\mathrm{ref},Q}=1.400\ \mathrm{g/cm^2}}

意味の説明

電子線では、線質によって校正深が変わります。相互校正した深さを、そのまま別の線質の測定に使うわけではありません。

2.基準の電離箱Aで水吸収線量を求める

公式

Dw,Qcross=MQcrossA×ND,w,Q0A×kQcross,Q0AD_{w,Q_{\mathrm{cross}}} = M^A_{Q_{\mathrm{cross}}} \times N^A_{D,w,Q_0} \times k^A_{Q_{\mathrm{cross}},Q_0}

数値の代入

Dw,Qcross=20.00×0.05300×0.9000=0.95400 GyD_{w,Q_{\mathrm{cross}}} = 20.00\times0.05300\times0.9000 = 0.95400\ \mathrm{Gy}

結果

Dw,Qcross=0.954 Gy\boxed{D_{w,Q_{\mathrm{cross}}}=0.954\ \mathrm{Gy}}

意味の説明

まず、校正定数がわかっているAを使って、今回の照射で水に与えられた線量を求めます。

Aの校正定数はコバルト60での値なので、電子線で使用するための線質変換係数を掛けています。

3.電離箱Bの校正定数を求める

公式

相互校正した線質では、Bについて次の関係が成り立ちます。

Dw,Qcross=MQcrossB×ND,w,QcrossBD_{w,Q_{\mathrm{cross}}} = M^B_{Q_{\mathrm{cross}}} \times N^B_{D,w,Q_{\mathrm{cross}}}

校正定数について整理すると、

ND,w,QcrossB=Dw,QcrossMQcrossBN^B_{D,w,Q_{\mathrm{cross}}} = \frac{D_{w,Q_{\mathrm{cross}}}} {M^B_{Q_{\mathrm{cross}}}}

数値の代入

ND,w,QcrossB=0.954002.000=0.4770 Gy/nCN^B_{D,w,Q_{\mathrm{cross}}} = \frac{0.95400}{2.000} = 0.4770\ \mathrm{Gy/nC}

結果

ND,w,QcrossB=0.4770 Gy/nC\boxed{N^B_{D,w,Q_{\mathrm{cross}}}=0.4770\ \mathrm{Gy/nC}}

意味の説明

Aによって、水吸収線量は0.954 Gyとわかっています。同じ照射条件で、Bは2.000 nCを示しました。

したがって、この線質では、Bの補正済み読み値1 nCが0.4770 Gyに相当します。

相互校正の中心となる考え方は、「基準の線量計で求めた線量」を「校正したい線量計の読み値」で割ることです。今回はBを校正するので、分母にはBの読み値を入れます。

4-①.相互校正した線質の係数を線形内挿する

求める係数は kQcross,QintBk^B_{Q_{\mathrm{cross}},Q_{\mathrm{int}}} です。

公式

k=k1+(k2−k1)R−R1R2−R1k=k_1+(k_2-k_1)\frac{R-R_1}{R_2-R_1}
記号意味
RR求めたい線質の R50R_{50}
R1,R2R_1,R_2RR を挟む、表の2つの R50R_{50}
k1,k2k_1,k_2R1,R2R_1,R_2 に対応する係数

数値の代入

相互校正した線質は R50=8.00R_{50}=8.00 なので、表の7.50と9.00の行を使用します。

kQcross,QintB=1.0000+(0.9850−1.0000)8.00−7.509.00−7.50k^B_{Q_{\mathrm{cross}},Q_{\mathrm{int}}} = 1.0000+(0.9850-1.0000) \frac{8.00-7.50}{9.00-7.50}
=1.0000−0.0150×0.501.50=1.0000−0.0150×13= 1.0000-0.0150\times\frac{0.50}{1.50} = 1.0000-0.0150\times\frac{1}{3}

結果

kQcross,QintB=0.9950\boxed{k^B_{Q_{\mathrm{cross}},Q_{\mathrm{int}}}=0.9950}

意味の説明

8.00は、7.50から9.00までの区間を3分の1だけ進んだ位置です。係数も1.0000から0.9850へ向かう変化量の3分の1だけ減らします。

4-②.測定対象の線質の係数を線形内挿する

求める係数は kQ,QintBk^B_{Q,Q_{\mathrm{int}}} です。

公式

k=k1+(k2−k1)R−R1R2−R1k=k_1+(k_2-k_1)\frac{R-R_1}{R_2-R_1}

数値の代入

測定対象の線質は R50=2.50R_{50}=2.50 なので、表の2.00と3.00の行を使用します。

kQ,QintB=1.0600+(1.0400−1.0600)2.50−2.003.00−2.00k^B_{Q,Q_{\mathrm{int}}} = 1.0600+(1.0400-1.0600) \frac{2.50-2.00}{3.00-2.00}
=1.0600−0.0200×0.501.00=1.0600−0.0200×12= 1.0600-0.0200\times\frac{0.50}{1.00} = 1.0600-0.0200\times\frac{1}{2}

結果

kQ,QintB=1.0500\boxed{k^B_{Q,Q_{\mathrm{int}}}=1.0500}

意味の説明

2.50は、2.00と3.00のちょうど中間です。そのため、係数も1.0600と1.0400の中間になります。

今回は単純平均と同じ結果ですが、4-①のように中間でない場合もあります。毎回平均するのではなく、区間のどの位置にあるかを考えます。

4-③.2つの係数の比から、必要な線質変換係数を求める

公式

kQ,QcrossB=kQ,QintBkQcross,QintBk^B_{Q,Q_{\mathrm{cross}}} = \frac{k^B_{Q,Q_{\mathrm{int}}}} {k^B_{Q_{\mathrm{cross}},Q_{\mathrm{int}}}}

数値の代入

kQ,QcrossB=1.05000.9950=1.055276…k^B_{Q,Q_{\mathrm{cross}}} = \frac{1.0500}{0.9950} = 1.055276\ldots

結果

kQ,QcrossB=1.0553\boxed{k^B_{Q,Q_{\mathrm{cross}}}=1.0553}

意味の説明

比をとる向きは、「測定する線質の係数÷相互校正した線質の係数」です。

どちらも共通の QintQ_{\mathrm{int}} を基準としているため、その比によって QcrossQ_{\mathrm{cross}} から QQ への変換係数が得られます。QintQ_{\mathrm{int}} で実際に測定する必要はありません。

5.測定対象の電子線の水吸収線量を求める

公式

Dw,Q=MQB×ND,w,QcrossB×kQ,QcrossBD_{w,Q} = M^B_Q \times N^B_{D,w,Q_{\mathrm{cross}}} \times k^B_{Q,Q_{\mathrm{cross}}}

数値の代入

途中で丸めないよう、線質変換係数は比のまま代入します。

Dw,Q=4.000×0.4770×1.05000.9950=2.013467… GyD_{w,Q} = 4.000\times0.4770\times \frac{1.0500}{0.9950} = 2.013467\ldots\ \mathrm{Gy}

結果

Dw,Q=2.013 Gy\boxed{D_{w,Q}=2.013\ \mathrm{Gy}}

意味の説明

これは、線質 QQ の校正深1.400 g/cm²における水吸収線量です。線量最大深での線量ではありません。

この段階でAの線質変換係数0.9000を再び掛けてはいけません。Aで線量を求め、Bに校正定数を与える段階で、すでに使用しています。

この問題の要点

  • 校正定数は「線量÷校正したい電離箱の読み値」で求める。
  • QcrossQ_{\mathrm{cross}} 用と QQ 用の係数を、それぞれ線形内挿する。
  • 「測定する線質の係数÷相互校正した線質の係数」の向きで比をとる。
  • 最後は、Bの読み値・Bの校正定数・Bの線質変換係数を掛ける。
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