統合領域・計算問題 5 / 5
第5問 極性効果・イオン再結合補正
−300 Vの極性補正を求め、100 V側の与えられた補正済み電荷と比較して再結合補正と水吸収線量を計算します。
問題
リニアックのパルス状電子線について、平行平板形電離箱を用いて、水ファントムの校正深で測定した。
通常の線量測定に使用する印加電圧は−300 Vとし、二点電圧法の低電圧には−100 Vを使用する。
極性を切り替えて測定したところ、以下の読み値が得られた。
測定データ
| 印加電圧 | 電離箱の読み値 |
|---|---|
| +300 V | +4.100 nC |
| −300 V:通常使用 | −4.060 nC |
| +100 V | +4.040 nC |
| −100 V | −3.960 nC |
測定条件は、以下のとおりとする。
- すべて同じ照射条件・同じMUで測定し、装置出力の変動は無視できる。
- 電圧や極性を変更した後、読み値が十分に安定してから測定している。
- 表の読み値は、極性効果とイオン再結合について未補正である。
- 漏れ電流の影響は無視できる。
- この電離箱では、使用する電圧範囲で二点電圧法を適用できることが確認されている。
再結合補正の計算に使用する−100 V側の極性補正済み電荷は、次の値を与える。
この値は電荷の絶対値であり、イオン再結合は未補正である。100 V側の極性補正係数や補正済み電荷を求める必要はない。
線量計算に使用するデータ
はコバルト60の線質、 は測定対象の電子線の線質を表す。
| 項目 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 温度気圧補正係数 | 1.0000 | |
| 電位計校正定数 | 1.0000 | |
| 水吸収線量校正定数 | 0.5300 Gy/nC | |
| 線質変換係数 | 0.9450 |
校正定数は、校正時の極性効果とイオン再結合を補正した読み値に対して与えられているものとする。
二点電圧法に用いる係数表
を高電圧の絶対値、 を低電圧の絶対値とする。以下は通常のパルス放射線に対する計算用係数である。
| 電圧比 | |||
|---|---|---|---|
| 2.0 | 2.337 | −3.636 | 2.299 |
| 3.0 | 1.198 | −0.875 | 0.677 |
| 4.0 | 1.022 | −0.363 | 0.341 |
設問
- −300 Vで使用する場合の極性効果補正係数 を求めなさい。
- −300 Vの読み値を極性補正し、 を求めなさい。
- 電圧比と極性補正後の読み値の比を求め、−300 Vでのイオン再結合補正係数 を算出しなさい。
- 通常使用する−300 Vの読み値について、補正済み電荷 を求めなさい。
- 校正深における水吸収線量 を求めなさい。
補正係数と電荷は小数第4位、線量は小数第3位まで示す。途中計算では丸めない。
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解答・解説
1.−300 Vで使用する場合の極性効果補正係数を求める
公式
| 記号 | 本問で使用する読み値 |
|---|---|
| +300 Vでの読み値 | |
| −300 Vでの読み値 | |
| 通常使用する−300 Vでの読み値 |
数値の代入
結果
意味の説明
極性を切り替えると、読み値は符号だけでなく、大きさも変わることがあります。
極性補正では、通常使用する極性の読み値を、正負の読み値の絶対値の平均に合わせます。今回は、通常使用する負極性側の読み値の絶対値が小さいため、補正係数は1より大きくなります。
極性補正は、単にマイナスの符号を取り除く操作ではありません。絶対値を取ったうえで、正負の読み値の大きさの違いを補正します。
2.−300 Vの読み値を極性補正する
公式
数値の代入
補正係数を途中で丸めないよう、分数のまま代入します。
結果
意味の説明
これで、−300 Vの読み値について、極性効果を補正できました。ただし、イオン再結合の補正はまだ行っていません。
次の計算では、この値と、問題文で与えられた100 V側の極性補正済み電荷を比較します。
3.イオン再結合補正係数を求める
まず、電圧比と読み値の比を求めます。
公式
は電圧比、 は極性補正後の読み値の比です。いずれも高電圧側を分子、低電圧側を分母にします。
数値の代入
100 V側には、問題文で与えられた値を使います。
電圧比が3.0なので、係数表から次の値を選びます。
続いて、再結合補正係数を求めます。
公式
数値の代入
結果
意味の説明
電離箱内で生じた電荷の一部は、電極に収集される前に再結合するため、その分だけ読み値が小さくなります。
二点電圧法では、異なる電圧での読み値を比較して、この電荷の取りこぼしを補正します。
ここで求めたのは、通常使用する−300 Vでの再結合補正係数です。100 V側の再結合補正係数を求めているわけではありません。
4.補正済み電荷を求める
公式
未補正の読み値から計算する場合は、
となります。
設問2で極性補正を済ませているため、次の式を使えます。
数値の代入
結果
意味の説明
−300 Vの読み値について、極性効果とイオン再結合を補正できました。
ここでは、すでに極性補正した を使っています。そのため、極性効果補正係数をもう一度掛けてはいけません。
5.水吸収線量を求める
公式
数値の代入
途中で丸めていない補正済み電荷を使います。
結果
意味の説明
これは、極性効果とイオン再結合を補正したうえで求めた、測定対象の電子線の校正深における水吸収線量です。
この問題の要点
- 極性補正では、正負の読み値を絶対値にしてから計算する。
- 再結合補正には、各電圧での極性補正済み電荷を使う。
- 電圧比も読み値の比も、高電圧側÷低電圧側で求める。
- 極性補正済みの電荷に、極性効果補正係数を再び掛けない。