統合領域・計算問題 2 / 5

第2問 不整形照射野のMU計算

上下絞りと遮蔽後の開口部から2種類の等価正方形を求め、散乱係数とTMRを使って必要なMUを計算します。

問題

6 MV X線を用い、水と等価な均質な物質中の深さ8.0 cmにある評価点へ、1門で2.00 Gyを照射する。

評価点はビーム中心軸上のアイソセンタにあり、線源―評価点間距離は100 cmとする。

上下絞りで作った長方形の照射野の一部を、外部遮蔽ブロックで遮蔽した。中心軸は遮蔽されていない。

項目条件
下絞りの開度 WW8.0 cm
上絞りの開度 LL12.0 cm
遮蔽後の開口部の面積 AA84.0 cm²
遮蔽後の開口部の周長 PP40.0 cm
コリメータ反転効果補正係数 kk1.5
基準出力 D0D_01.000 cGy/MU
トレイ係数 TFTF0.980

開度・面積・周長は、すべてアイソセンタ面での値である。

基準出力は、照射野10×10 cm²、基準となる最大線量深、線源―測定点間距離100 cmで定義する。以下の散乱係数とTMRも、この基準深に合わせた演習用データである。

正方形照射野の一辺ScS_c:コリメータ散乱係数ScpS_{cp}:全散乱係数深さ8 cmのTMR
6.0 cm0.9800.9250.810
8.0 cm0.9900.9600.820
10.0 cm1.0001.0000.830
12.0 cm1.0081.0300.838
15.0 cm1.0181.0650.848

本問では、次の近似を用いる。

Ceq=(1+k)WLkW+LSeq=4APC_{\mathrm{eq}}=\frac{(1+k)WL}{kW+L} \qquad S_{\mathrm{eq}}=\frac{4A}{P}
  • ScS_c は、上下絞りから求めた CeqC_{\mathrm{eq}} に対応する値を使う。
  • SpS_p とTMRは、遮蔽後の開口部から求めた SeqS_{\mathrm{eq}} に対応する値を使う。
  • 同じ正方形照射野について、Sp=Scp/ScS_p=S_{cp}/S_c とする。
  • 表にない Sc、Scp、TMRS_c、S_{cp}、TMR は、それぞれ線形内挿して求める。
  • 外部ブロックによる ScS_c の追加変化は無視し、トレイ以外の補助具係数は1.000とする。

以下を求めなさい。

  1. CeqC_{\mathrm{eq}} と SeqS_{\mathrm{eq}}
  2. MU計算に使う ScS_c
  3. MU計算に使う SpS_p
  4. 深さ8 cmのTMR
  5. 評価点における1 MU当たりの線量
  6. 必要なMU値

途中の計算では丸めず、最終的なMUは整数に四捨五入する。

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解答・解説

1.2種類の等価正方形を求める

まず、上下絞りから ScS_c 用の等価正方形を求めます。

公式

Ceq=(1+k)WLkW+LC_{\mathrm{eq}} = \frac{(1+k)WL}{kW+L}

WW は下絞りの開度、LL は上絞りの開度、kk はコリメータ反転効果補正係数です。

数値の代入

Ceq=(1+1.5)×8.0×12.01.5×8.0+12.0=24024C_{\mathrm{eq}} = \frac{(1+1.5)\times8.0\times12.0} {1.5\times8.0+12.0} = \frac{240}{24}

結果

Ceq=10.0 cm\boxed{C_{\mathrm{eq}}=10.0\ \mathrm{cm}}

意味の説明

上下絞りの設定による装置側の出力変化を評価するため、長方形照射野を、この近似で得られる等価な正方形に置き換えます。

続いて、遮蔽後の開口部から SpS_p・TMR用の等価正方形を求めます。

公式

Seq=4APS_{\mathrm{eq}}=\frac{4A}{P}

AA は遮蔽後の開口部の面積、PP はその周長です。

数値の代入

Seq=4×84.040.0S_{\mathrm{eq}} = \frac{4\times84.0}{40.0}

結果

Seq=8.4 cm\boxed{S_{\mathrm{eq}}=8.4\ \mathrm{cm}}

意味の説明

本問では、次のように参照する照射野を使い分けます。

求める係数使用する等価正方形
MU計算に直接使う ScS_c上下絞りから求めた Ceq=10.0C_{\mathrm{eq}}=10.0 cm
SpS_p とTMR遮蔽後の開口部から求めた Seq=8.4S_{\mathrm{eq}}=8.4 cm

2.MU計算に使うコリメータ散乱係数を求める

公式・参照関係

Sc=Sc(Ceq)S_c=S_c(C_{\mathrm{eq}})

数値の代入・表の参照

Sc=Sc(10.0)S_c=S_c(10.0)

表の10.0 cmの行を読みます。

結果

Sc=1.000\boxed{S_c=1.000}

意味の説明

ここで使うのは、ブロックで遮蔽した後の開口部ではなく、上下絞りの設定から求めた等価正方形です。

3.MU計算に使うファントム散乱係数を求める

公式

Sp(s)=Scp(s)Sc(s)S_p(s)=\frac{S_{cp}(s)}{S_c(s)}

ここでは s=Seqs=S_{\mathrm{eq}} です。分子と分母は、同じ正方形照射野の値にそろえます。

表にない値は、次の線形内挿の公式で求めます。

r=s−s1s2−s1r=\frac{s-s_1}{s_2-s_1}
f(s)=f(s1)+{f(s2)−f(s1)}rf(s)=f(s_1)+\{f(s_2)-f(s_1)\}r

s1,s2s_1,s_2 は求めたい辺長を挟む表の値、ff は求めたい係数、rr は区間を進んだ割合です。

数値の代入

まず、内挿する割合を求めます。

r=8.4−8.010.0−8.0=0.2r=\frac{8.4-8.0}{10.0-8.0}=0.2

それぞれの係数を内挿します。

Scp(8.4)=0.960+(1.000−0.960)×0.2=0.968S_{cp}(8.4) = 0.960+(1.000-0.960)\times0.2 = 0.968
Sc(8.4)=0.990+(1.000−0.990)×0.2=0.992S_c(8.4) = 0.990+(1.000-0.990)\times0.2 = 0.992

これらを最初に示した公式へ代入します。

Sp(8.4)=0.9680.992=0.975806…S_p(8.4) = \frac{0.968}{0.992} = 0.975806\ldots

結果

Sp=0.9758\boxed{S_p=0.9758}

意味の説明

ここで割る ScS_c は、8.4 cmの正方形の全散乱係数から、ファントム散乱係数を取り出すための値です。

ScS_c の使い道本問の値
MU計算に直接掛ける、絞り設定に対応した値1.000
Sp=Scp/ScS_p=S_{cp}/S_c の分母として使う、8.4 cmに対応した値0.992

同じ記号でも、参照する照射野と役割が異なります。

4.深さ8 cmのTMRを求める

公式

深さを固定したとき、照射野の辺長に対する線形内挿は、次の式で行います。

TMR(s)=TMR(s1)+{TMR(s2)−TMR(s1)}s−s1s2−s1TMR(s) = TMR(s_1) + \{TMR(s_2)-TMR(s_1)\} \frac{s-s_1}{s_2-s_1}

数値の代入

TMRには、遮蔽後の SeqS_{\mathrm{eq}} を使用します。

TMR(8.4)=0.820+(0.830−0.820)8.4−8.010.0−8.0TMR(8.4) = 0.820+(0.830-0.820) \frac{8.4-8.0}{10.0-8.0}
=0.820+0.010×0.2= 0.820+0.010\times0.2

結果

TMR=0.822\boxed{TMR=0.822}

意味の説明

照射野の辺長について内挿しています。深さは表と同じ8 cmのままです。

この値は、本問の対応する測定条件で、深さ8 cmの線量が基準となる最大線量深の線量の82.2%であることを表します。

5.評価点での1 MU当たりの線量を求める

公式

1 MU当たりの線量を DMUD_{\mathrm{MU}} とすると、

DMU=D0×Sc(Ceq)×Sp(Seq)×TMR×TFD_{\mathrm{MU}} = D_0 \times S_c(C_{\mathrm{eq}}) \times S_p(S_{\mathrm{eq}}) \times TMR \times TF

です。

記号意味
D0D_0基準条件での1 MU当たりの線量
ScS_c装置側の出力変化を反映する係数
SpS_pファントム内の散乱変化を反映する係数
TMR深さによる線量の変化を反映する比
TFTFトレイによる減弱を反映する係数

数値の代入

DMU=1.000×1.000×0.9680.992×0.822×0.980D_{\mathrm{MU}} = 1.000 \times1.000 \times\frac{0.968}{0.992} \times0.822 \times0.980

結果

DMU=0.7860706… cGy/MU\boxed{ D_{\mathrm{MU}} = 0.7860706\ldots\ \mathrm{cGy/MU} }

意味の説明

今回の条件では、1 MU照射すると評価点に約0.786 cGy届く計算です。基準出力が1 cGy/MUでも、異なる深さ・照射野の評価点で常に同じ値になるわけではありません。

6.必要なMUを求める

公式

MU=DDMUMU=\frac{D}{D_{\mathrm{MU}}}

各係数まで展開すると、

MU=DD0×Sc(Ceq)×Sp(Seq)×TMR×TFMU = \frac{D} {D_0\times S_c(C_{\mathrm{eq}}) \times S_p(S_{\mathrm{eq}}) \times TMR\times TF}

です。DD は評価点に与えたい線量です。

数値の代入

分母がcGy/MUなので、分子の線量もcGyにそろえます。

D=2.00 Gy=200 cGyD=2.00\ \mathrm{Gy}=200\ \mathrm{cGy}
MU=2001.000×1.000×0.9680.992×0.822×0.980=254.430…MU = \frac{200} {1.000\times1.000\times \frac{0.968}{0.992}\times0.822\times0.980} = 254.430\ldots

結果

整数に四捨五入して、

254 MU\boxed{254\ \mathrm{MU}}

となります。

意味の説明

「与えたい線量」を「1 MUで届く線量」で割ることで、必要なMUを求めます。本問では、問題文の指示に従って最後だけ整数に丸めています。

この問題の要点

  • 絞りから求める等価正方形と、遮蔽後の開口部から求める等価正方形を使い分ける。
  • Sp=Scp/ScS_p=S_{cp}/S_c の分子と分母は、同じ正方形照射野の値にそろえる。
  • MU計算に直接使う ScS_c と、SpS_p を求めるための ScS_c を混同しない。
  • GyとcGyをそろえ、最後にMUを丸める。
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