統合領域・計算問題 1 / 5

第1問 光子線の水吸収線量

温度気圧補正、TPR、線形内挿を使い、校正深と最大線量深の水吸収線量を求めます。

問題

6 MV X線の水吸収線量を、円筒形電離箱を用いて測定した。

電離箱は水ファントム中の校正深 dc=10 g/cm2d_c=10\ \mathrm{g/cm^2} に設置した。線源から電離箱の基準点までの距離は100 cm、電離箱の位置での照射野は 10×10 cm210\times10\ \mathrm{cm^2} とする。

測定条件は次のとおりである。数値と係数表は、この演習の条件として与える。

項目値
校正深での補正前の電荷量 MrawM_{\mathrm{raw}}−30.00 nC
測定温度 tt24.0 ℃
測定気圧 PP100.00 kPa
校正定数の基準温度 t0t_022.0 ℃
校正定数の基準気圧 P0P_0101.33 kPa
コバルト60での水吸収線量校正定数 ND,w,Q0N_{D,w,Q_0}0.05400 Gy/nC
この測定条件に対応する校正深のTMR0.780

測定温度は、水と十分に温度が一致した電離箱内の空気の温度とする。漏れ電流の影響は無視でき、極性効果補正係数・イオン再結合補正係数・電位計校正定数は、いずれも1.000とする。

別途、線質を調べるため、深さ10および20 g/cm2\mathrm{g/cm^2} で測定した。両測定で線源―電離箱間距離100 cm、電離箱位置での照射野 10×10 cm210\times10\ \mathrm{cm^2}、照射MUをそろえた。

測定深必要な補正を済ませた電荷量の大きさ
10 g/cm2\mathrm{g/cm^2}20.00 nC
20 g/cm2\mathrm{g/cm^2}13.30 nC

本問では、この電荷量の比を線量比として扱う。線質変換係数は、次の表から線形内挿で求める。

線質指標 TPR20,10TPR_{20,10}線質変換係数 kQ,Q0k_{Q,Q_0}
0.6500.993
0.6800.989

以下を求めなさい。

  1. 温度気圧補正係数 kTPk_{TP}
  2. 校正深での補正後の電荷量 MQM_Q
  3. 線質指標 TPR20,10TPR_{20,10}
  4. 線質変換係数 kQ,Q0k_{Q,Q_0}
  5. 校正深の水吸収線量 Dw,Q(dc)D_{w,Q}(d_c)
  6. 同じMUを照射したときの、TMRに対応する最大線量深での水吸収線量 Dw,Q(dmax⁡)D_{w,Q}(d_{\max})

途中の計算では丸めず、最終答案は補正係数を小数第4位、電荷量・線量・TPRを小数第3位まで示す。温度気圧補正には273.2を用いる。

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解答・解説

1.温度気圧補正係数を求める

公式

kTP=273.2+t273.2+t0×P0Pk_{TP} = \frac{273.2+t}{273.2+t_0} \times \frac{P_0}{P}

数値の代入

kTP=273.2+24.0273.2+22.0×101.33100.00=1.020165…k_{TP} = \frac{273.2+24.0}{273.2+22.0} \times \frac{101.33}{100.00} = 1.020165\ldots

結果

kTP=1.0202\boxed{k_{TP}=1.0202}

意味の説明

電離箱の内部には空気があります。同じ容積でも、温度や気圧によって内部の空気の密度が変わり、読み値に影響します。その違いを補うのが温度気圧補正です。

今回は基準より高温・低気圧なので、読み値を大きく補正する方向になります。温度には、摂氏の値同士の比ではなく、絶対温度の比を使います。

2.補正後の電荷量を求める

公式

MQ=∣Mraw∣×kTP×ks×kpol×kelecM_Q = |M_{\mathrm{raw}}| \times k_{TP} \times k_s \times k_{\mathrm{pol}} \times k_{\mathrm{elec}}

数値の代入

本問では温度気圧補正以外の係数はすべて1.000です。途中で丸めないよう、温度気圧補正の式をそのまま代入します。

MQ=30.00×273.2+24.0273.2+22.0×101.33100.00×1.000×1.000×1.000M_Q = 30.00 \times \frac{273.2+24.0}{273.2+22.0} \times \frac{101.33}{100.00} \times1.000\times1.000\times1.000
=30.604955… nC= 30.604955\ldots\ \mathrm{nC}

結果

MQ=30.605 nC\boxed{M_Q=30.605\ \mathrm{nC}}

意味の説明

表示値の「−」は電荷の符号です。本問の線量計算では、その大きさを使います。

ただし、絶対値を取る操作と極性効果補正は別です。今回は問題文で kpol=1.000k_{\mathrm{pol}}=1.000 と指定されています。

3.線質指標を求める

公式

TPR20,10=D20D10TPR_{20,10} = \frac{D_{20}}{D_{10}}

本問では、必要な補正を済ませた電荷量の比を線量比として扱うため、

TPR20,10=M20M10TPR_{20,10} = \frac{M_{20}}{M_{10}}

となります。D20,D10D_{20},D_{10} はそれぞれ深さ20、10 g/cm2\mathrm{g/cm^2} での線量、M20,M10M_{20},M_{10} は対応する補正済み電荷量の大きさです。

数値の代入

TPR20,10=13.3020.00=0.665TPR_{20,10} = \frac{13.30}{20.00} = 0.665

結果

TPR20,10=0.665\boxed{TPR_{20,10}=0.665}

意味の説明

TPR20,10TPR_{20,10} は、定められた測定条件での「深さ20の線量÷深さ10の線量」です。X線の透過のしやすさを表す指標として使います。

添字の順番どおり、20の値を分子、10の値を分母に置きます。線質測定用の電荷量と、線量測定用の電荷量を混同しないようにします。

4.線質変換係数を線形内挿で求める

公式

求めたい線質指標を xx、それを挟む表の値を x1,x2x_1,x_2、対応する係数を k1,k2k_1,k_2 とします。

r=x−x1x2−x1r=\frac{x-x_1}{x_2-x_1}
kQ,Q0=k1+(k2−k1)rk_{Q,Q_0}=k_1+(k_2-k_1)r

rr は、表の区間のどこまで進んだかを表す割合です。

数値の代入

r=0.665−0.6500.680−0.650=0.0150.030=0.5r = \frac{0.665-0.650}{0.680-0.650} = \frac{0.015}{0.030} = 0.5
kQ,Q0=0.993+(0.989−0.993)×0.5=0.991k_{Q,Q_0} = 0.993+(0.989-0.993)\times0.5 = 0.991

結果

kQ,Q0=0.9910\boxed{k_{Q,Q_0}=0.9910}

意味の説明

線形内挿とは、表の2点の間を直線と考えて、その途中の値を求める方法です。

今回は求めたいTPRが区間のちょうど半分にあるので、係数も0.993から0.989への変化の半分だけ進めます。単純平均が使えるのは、求めたい値がちょうど中間にある場合です。

電離箱の校正定数はコバルト60で与えられているため、今回のX線との線質の違いを、この係数で反映します。

5.校正深の水吸収線量を求める

公式

Dw,Q(dc)=MQ×ND,w,Q0×kQ,Q0D_{w,Q}(d_c) = M_Q\times N_{D,w,Q_0}\times k_{Q,Q_0}
項意味
MQM_Q必要な補正を済ませた電荷量
ND,w,Q0N_{D,w,Q_0}コバルト60の条件で、電荷量を水吸収線量へ換算する校正定数
kQ,Q0k_{Q,Q_0}コバルト60と測定対象のX線との線質の違いを反映する係数

数値の代入

途中で丸めていない値を使います。

Dw,Q(dc)=30.604955…×0.05400×0.9910=1.637793… GyD_{w,Q}(d_c) = 30.604955\ldots\times0.05400\times0.9910 = 1.637793\ldots\ \mathrm{Gy}

結果

Dw,Q(dc)=1.638 Gy\boxed{D_{w,Q}(d_c)=1.638\ \mathrm{Gy}}

意味の説明

補正した電荷量に、校正定数と線質変換係数を掛けることで、水吸収線量へ換算できます。

単位でも確認できます。

nC×GynC=Gy\mathrm{nC}\times\frac{\mathrm{Gy}}{\mathrm{nC}} = \mathrm{Gy}

校正定数がGy/nCで与えられているため、電荷量をCへ換算する必要はありません。

6.最大線量深の水吸収線量を求める

公式

TMR(dc)=Dw,Q(dc)Dw,Q(dmax⁡)TMR(d_c) = \frac{D_{w,Q}(d_c)} {D_{w,Q}(d_{\max})}

最大線量深の線量について整理すると、

Dw,Q(dmax⁡)=Dw,Q(dc)TMR(dc)D_{w,Q}(d_{\max}) = \frac{D_{w,Q}(d_c)}{TMR(d_c)}

数値の代入

Dw,Q(dmax⁡)=1.637793…0.780=2.099735… GyD_{w,Q}(d_{\max}) = \frac{1.637793\ldots}{0.780} = 2.099735\ldots\ \mathrm{Gy}

結果

Dw,Q(dmax⁡)=2.100 Gy\boxed{D_{w,Q}(d_{\max})=2.100\ \mathrm{Gy}}

意味の説明

TMRが0.780とは、この測定条件で校正深の線量が最大線量深の線量の78%であることを表します。

「ある量の78%が校正深の線量なら、元の100%はいくらか」と考えるため、TMRで割ります。照射MUと、TMRを定義した線源―測定点間距離などの条件をそろえて換算します。

補足:線形内挿で、求めたい値が中間でない場合

同じ表で、TPRが0.660の場合を考えます。これは設問とは別の確認例です。

公式

k=k1+(k2−k1)x−x1x2−x1k=k_1+(k_2-k_1)\frac{x-x_1}{x_2-x_1}

数値の代入

k=0.993+(0.989−0.993)0.660−0.6500.680−0.650k = 0.993+(0.989-0.993) \frac{0.660-0.650}{0.680-0.650}
=0.993−0.004×13=0.991666…= 0.993-0.004\times\frac{1}{3} = 0.991666\ldots

結果

k=0.9917\boxed{k=0.9917}

意味の説明

TPRが区間の3分の1の位置にあるので、係数も全体の変化量の3分の1だけ変化させます。計算後は、答えが表の2つの係数の間に入っていることも確認します。表の範囲の外を求める「外挿」とは区別します。

この問題の要点

  • 温度気圧補正には絶対温度の比を使う。
  • TPR20,10TPR_{20,10} は20の値を10の値で割る。
  • 線形内挿では、区間を進んだ割合に応じて係数を変化させる。
  • 最大線量深の線量へ換算するときは、本問のTMRで割る。
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